この記事の公開日:2019年10月17日
メディカルリサーチ株式会社 WEBマガジンVol.25
この度の台風19号により、被害を受けられた方に衷心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧と、そのご家族様、関係者の方と皆様が平穏な日々を取り戻せるよう、心よりお祈り申し上げます。
メディカルリサーチ株式会社
メディカルリサーチ株式会社は、2011年より医療事故や交通事故受傷、
はたまた民事意思能力等の医学分野に関わる事案について、
各専門医とともに、
厳正中立な立場から科学的、客観的に原因の究明、鑑定評価を行い、
意見書・画像鑑定を行っております。
皆様のおかげで、多くのご依頼を頂くようになり、
取扱事案件数の増加、また取扱分野も非常に多岐にわたって参りました。
今後も様々な分野に順応できる対策を講じて参ります。
また今回は久しぶりに人気シリーズの「真実を読む」にて
症例を1つお届けいたします。
本日のメールマガジン、お付き合いの程、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【ご案内】2019医療鑑定セミナー@大阪、東京 参加費無料!
毎年開催している医療鑑定セミナーですが、
今年度残すところ大阪(11/14)・東京会場(11/21)のみとなりました。
初開催となった福岡・札幌では
「交通事故外傷」をメインに講演をさせていただきました。
大阪・東京では「労災事案・意思能力問題」について
分かりやすく医師が解説させて頂きます。
また、東京会場においては特別講師として
脳神経外科医である中嶋浩二先生にもご登壇頂き、
交通事故(高次脳機能障害)事案の戦い方についてもお話頂きます。
昨今、依頼が急増している分野について
医学的な着目点を整理しながら解説させて頂く予定です。
さらにはこれから始められるという先生方もご安心ください!
講演では押さえておくべき基礎になる解剖学を折り込みながら説明していきます。
皆さまお誘いあわせの上、是非ご参加ください。
【大 阪】会場
日 時
2019年11月14日(木) 18:30~20:00
会 場
新大阪丸ビル別館(1-1)
参加費
無料
講 師
佐藤俊彦 先生(放射線科専門医)
テーマ
鑑定依頼増加中!労災事故・遺言訴訟案件 ~医療的着目ポイント~
【東 京】会場
日 時
2019年11月21日(木) 18:30~20:00
会 場
丸の内バカンス(speace4)
参加費
無料
講 師
佐藤俊彦 先生(放射線科専門医)
ゲスト
中嶋浩二 先生(脳神経外科医)
メイン講座
鑑定依頼増加中!労災事故・遺言訴訟案件 ~医療的着目ポイント~
ゲスト講座
交通事故(高次脳機能障害)事案の戦い方
<申し込みやその他詳細はこちら>
▼https://www.medicalresearch.co.jp/seminar/2019/1256/
<お問合せ先>
TEL:03-6273-4403
Mail: mr.company@medicalresearch.co.jp
【真実を読む】 小児 医療過誤事案
患児は、相手方病院にて骨髄異形成症候群(MDS)から移行する急性骨髄性白血病(AML)と診断されバンクドナーより非血縁骨髄移植(UBMT)し完全緩解。
しかし、数年後に再発、治療を行うも寛解せず、相手方病院にて再度、非血縁骨髄移植(UBMT)を行い退院したが、翌月の検査にて末梢血に異常を認めハプロ移植。
この頃から全身状態悪化を認め、入院。
入院当日、左胸水穿刺施行、このとき胸水は血性で止血に時間を要した。
この後、倦怠感、悪寒、血圧低下があり輸血開始。
家人が再三ナースコールにて変調を訴えるが処置等なく、2時間後、心肺停止(CPA)にて心肺蘇生(CPR)試みるも死亡確認となった
①血圧の変動から読み解く
1、ショックの状態から出血性ショックの時間を探る
尿量の記載がカルテになかったため、日本救急医学会「ショックの診断基準」を用いての評価は困難であったが、ショックの定義として用いられる「ショック指数」は、心拍数/収縮期血圧である文献を活用し、家人がナースコールを行った時から患児は出血性ショックに陥っていたと判断した。
2、穿刺か胸水ドレナージが問題なのか
夕方から開始した胸水穿刺後の血圧は正常で推移していたが、その後進行性の低下を認めている。これは、胸水ドレナージが原因ではなく、穿刺による失血が原因であり、出血に起因する血圧低下に合致すると判断した。
3、薬剤の影響はなかったか
投与されていた薬剤で血圧に変動を与えるのはラシックス注とダイアート錠である。
②死因についての考察
1)肺損傷での気胸なのか
死亡直前に胸腔ドレナージを行われ、重大な合併症は「肺損傷」と「胸壁からの出血」である。「肺損傷」の多くは、穿刺で肺に穴が開き、肺の空気が胸腔内に漏れて肺がしぼむ「気胸」である。診療録および看護記録では、空気が排出された記録がなく、AI画像でも気胸を認めないため否定。
1)肺損傷での気胸なのか
死亡直前に胸腔ドレナージを行われ、重大な合併症は「肺損傷」と「胸壁からの出血」である。「肺損傷」の多くは、穿刺で肺に穴が開き、肺の空気が胸腔内に漏れて肺がしぼむ「気胸」である。診療録および看護記録では、空気が排出された記録がなく、AI画像でも気胸を認めないため否定。
③被告病院における問題点
熟練した医師が行っても一定の確率で合併症は発症するため、合併症を発症させたことを責めるべきではないものの、手技の習得と同様に合併症の対応方法の習得も医学教育には重要である。今回、合併症の診断および対応に問題があったと判断。
④総括
被告医師は、予想される合併症に対して呼吸器外科医の所在を確認することなく、また合併症を早期に発見するために看護師へ具体的な指示もないため、血胸の発見が遅れた。更に、血胸と判明した後も、止血処置を行なうこともなく、呼吸器外科医へ連絡することもしなかった。胸腔ドレナージを行なうにあたり、準備、合併症の診断、合併症に対する処置のいずれにおいても過失が重なったために死に至った。
⑤意見書提出のその後・・・
上記内容の意見書を提出し、数回の弁論を重ねた後、和解が成立。