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WebマガジンVol.2 【真実を読む】オートプシーイメージングの実際/【医療行政情報】最近の医療行政、病院のトッピックス

この記事の公開日:2012年12月11日

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メディカルリサーチ WebマガジンVol.2

【今号の目次】

・【真実を読む】オートプシーイメージングの実際
・【医療行政情報】最近の医療行政、病院のトピックス

【真実を読む】オートプシーイメージングの実際

症例

密室内転倒事故における眼窩部外傷に関わるケース ~眼窩内所見は偶然性を裏付けるか~

事案概要

保険金請求された事故は、果たして偶然のものであったのか、それとも故意であったのかを究明する目的にて、救急搬送先での検査画像の鑑定を依頼された。
事故当日、海外旅行中の受傷患者(被保険者)は、宿泊先ホテルにて帰国前の荷物整理をしていた。
室内は荷物が広げられたままの状態であったが、空腹であったため、即席カップ麺を食べようと給湯準備をし、数分後、カップ麺を食べようとして、右手にカップと箸を持って移動しようとしたところ、広げた荷物の下に敷いていたシートで足を滑らせ前方向に転倒した。その際、庇い手的に両肘を床についたことから、手に持っていた箸を自身の右眼窩部に刺してしまった。
帰国後、海外旅行保険の保険金請求を行ったところ、損害保険会社より、事故は密室内で発生し、目撃者がなく、眼窩部の画像陰影が気泡の可能性があると判断されたことから、自身で麻酔をしたうえでの故意が疑われ、問題となった画像所見を検討究明することとなった。

鑑定の要点

転倒事故発生後、被保険者の居室に駆け付けたホテルスタッフが目撃した際には、箸は途中で折れて、まだ被保険者の眼に刺さった状態であった。
救急搬送された大学病院にて、折れた箸が抜き取られ治療が行われたものの、箸の先端部(18㎜程度)の所在は不明であった。
同病院にて撮影された検査画像には、眼窩部に陰影が確認されたことから、果たしてこの画像所見が気泡なのか所在不明となっている箸の先端部に一致するものなのかを判定することとなった。

受傷状態(図解)


箸の先端が見当たらず、体内に入っているか否か?が問題となっている。
これを画像で証明できるかという問題。

鑑定結果


CTとMRI検査の各画像を精査した結果
(1)CT画像上、右眼窩下壁の外直筋と下直筋に接した部分に、外直筋よりもわずかにhigh density lesion(異物を示唆)を認めること。
(2) 異物が、直径3㎜、長さ9㎜大の長径の物質であること。
(3)MRIの信号がsignal void lesion(繊維性組織を示唆)であること
などから、木製病変(折れて所在不明な箸の先端部分)に矛盾しない所見であることが確認された。

CTおよびMRIでは、右眼窩下外側の下直筋と外直筋の間に異物の信号を認めた。異物は、現在も存在していることが証明され、事故による残存異物を画像的に証明できた。

本件では、患者の治療先病院でも異物があることは認められていたが、箸の先端と一致するかまでは判定されず、保険会社は「故意でもできる」と主張したが、本鑑定により、「故意で眼窩と眼球の接する部位に箸を滑り込ませる事には無理があり、床にぶつかった箸が骨(眼窩骨)を支点にテコの原理で眼球が外側に飛び出し気味になって眼窩骨膜や強膜外隙等に沿って視神経近くの眼球後壁に刺さった」との結論に至り、裁判では、事故によるものと断定され、保険会社の訴えを退けることができた。本事案は、海外旅行保険に関わる保険金請求にまつわる事例であるが、このような事故に関連するケースでも、画像鑑定が問題解決の有効な手段であることが実証された。

【医療行政情報】最近の医療行政、病院のトピックス

医療事故調査と警察捜査との関係、警察の関与に慎重な意見
医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会(第7回 9/28)《厚生労働省》

厚生労働省は9月28日に、医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会を開催しました。
この日は、調査の仕組みのうち(1)費用負担(2)捜査機関との関係―について議論したほか、日本医療安全調査機構の矢作氏(東京地域代表)からヒアリングを行いました。
医療事故調査における費用については、これまでに「基本的に医療者が提供すべき」とする意見がある一方で、「患者側からの申し出による場合には、ある程度の患者側負担も考えるべき」との見解もあります。また、国による支援を求める意見も強く、今後の調整が待たれるところです。
また、事故調査は捜査機関との関係も問題になります。たとえば、事故が医療者の過失に基づく場合には「業務上過失致死傷罪」(刑法第211条)の立件に向けた捜査が行われます。この場合、カルテ等を含む医療記録・情報は重要な証拠であり「押収」対象になるなど、事故調査と警察の捜査のどちらが優先されるかなどが問題になるわけです。
関係団体からは「医療関連死は、故意などが認められないかぎり警察には届出ない」「院内調査・調査報告書検証が終了するまで、警察は捜査に着手しない」という意見が多くあります。
検討部会の構成員からも「警察の捜査が入ると、民事訴訟の資料入手に困るケースもある」「再発防止のために第三者機関が設けられるので、効果として刑事司法の関与も少なくなるはずだ」という意見が出されています。
今回で「調査の仕組みのあり方」の議論が一巡したことになり、今後は「再発防止のあり方」について、調査結果の活用方策や、医療事故情報収集等事業と調査との連携などについて議論する見込みです。

医療ADR機関、地域や実施主体によって体制もさまざま
医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議(第7回 9/21)《厚生労働省》

厚生労働省は9月21日に、医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議を開催しました。
今回は、厚労省当局から、さまざまな医療ADR機関を対象に行ったアンケート結果などが紹介されています。
アンケート調査項目は、(1)申立者の制限(2)事前相談(3)(和解等の)成立手数料(4)実施体制(5)患者側代理人の傾向(6)医療機関側代理人の傾向(7)実績―など。
回答は、医療ADRを行っている弁護士会の紛争解決等センター9機関と、県医師会の中立処理委員会1機関、NPO法人の医療紛争相談センター1機関から寄せられました。
(4)の実施体制などは、各機関によって異なる。「仲裁人1名が原則」としているところから、「患者を弁護した経験のある弁護士と、医療機関を弁護した経験のある弁護士の合計2名体制」のところ、「実際の裁判のように3名体制」をとっているところなどさまざまです。各機関で適切な体制を模索している段階と考えられます。
(7)の実績のうち、応諾率は31.8%~100%と大きなバラつきがあります。もっとも、相談件数そのものが少ない(1件~22件)点には注意が必要です。なお、(4)の実施体制と(7)の実績(このうち応諾率)とを比較しても、特段の関連はなさそうです。
また、応諾に至っていない理由としては、「医療機関側が無責と判断しており、交渉の余地なし」「事実関係の認識の隔たりが大きい」「申立人に代理人弁護士が付いていない場合に不応諾が多い」「訴訟で解決する意向」などが目立っています。
東京・愛知・大阪・茨城(抜粋)

名称 あっせん人 専門委員 実績(平成21年度以降) 応諾率
東京三弁護士会
紛争解決・仲裁センター
弁護士
1名/2名/3名
なし 平成21年度 38件
平成22年度 32件
平成23年度 45件
71%
愛知県弁護士会
紛争解決センター
原則弁護士1名 あり(医師)
年1~3件
平成21年 41件
平成22年 36件
平成23年 28件
74.1%
公益社団法人
総合紛争解決センター
(大阪)
弁護士2名
医師1名
なし 平成21年度 4件
平成22年度 13件
平成23年度 9件
33%
茨城県医療中立処理委員会 弁護士1名、
学識経験者1名、
医師1名
あり 平成21年度 13件
平成22年度 12件
平成23年度 13件
72.7%

日弁連ADRセンター委員長 渡部 晃氏からの資料より、一部抜粋