事例紹介5

交通事故による高次脳機能障害に関する症例

2003年12月、被害者が自転車にて交差点を横断中に右折車両と衝突した。患者の意識はなく、病院へ搬送後CTおよびMRI検査が行われた。
その後、患者の意識は戻り表面的には回復したかにみえたが、記憶、記銘力障害、集中力障害、多弁などがみられ元の職場での就労が困難となり、被害者請求にて『7級4号の高次脳機能障害に認定(自賠責)』(※1)されたものの、画像上で脳室拡大が明確でない等で、高次脳機能障害の存在自体が問題(争点)となった。

※1・・・神経系統の機能又は精神の障害・障害の等級及び程度/第7級・第4号・・・神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害者数は30万人といわれています。
高次脳機能障害とは、頭部外傷後などで脳の損傷により生じる認知障害(記憶、記銘力障害、集中力障害、遂行機能障害、判断力低下等)と人格障害(感情易変、暴力・暴言、攻撃 性、多弁、自発性・活動性の低下、病的嫉妬、被害妄想等)によって社会復帰や生活への適応が著しく難しくなっている場合を言います。

撮影画像


所見と臨床経過

(1)衝突多発性脳出血@外傷性出血
(2)脳出血後遺症@NPH(正常圧水頭症)などの所見を認めない
(3)右側頭骨骨折による中耳炎
右前頭葉から頭頂葉(画像上1)にかけて、広範囲な皮質下出血(画像上2)後の後遺症を認める。
病変の主体はgliosisによる変化だが、高次脳機能障害を説明可能な病変であると考えられる。
聴力障害に関しては、右側の側頭骨骨折による変化を疑う。

本事例のポイント

(1)高次脳機能障害を裏付けるポイント
(2)画像上から評価される高次脳機能障害のポイント
(3)その他画像上から確認できる所見について
外傷後の脳の高次機能障害の判定根拠となる脳室拡大は、主として外傷初期ははっきりとした脳出血や脳挫傷が認められない。いわゆる微細脳損傷の例で、後に脳室拡大(主として第3脳室)が認められる場合、高次機能障害の画像的根拠として取り上げられるもので、このケースのように当初から左右前頭葉(画像上1)、左側頭葉(画像上3)などの左右に亘る挫傷が存在する場合、脳室拡大の有無はあまり後遺症の判定に基準とはならない。