事例紹介4

事例4/MRIの画像描出は頚椎損傷を示唆する所見か?

交通事故受傷から2年経過した段階で、患者から、後遺障害として頸髄損傷が遺残したと訴えがあった。
訴えは、患者の主治医が、MRI検査画像に頸髄損傷の所見があると診断したことに基づいたものであったが、他医のセカンドオピニオンでは、画像描出は「アーチファクト」であるとの評価であった。
主治医からは、ウィンドーレベルとウィンドー幅の相違や画像解像度、磁場の差から画像の診断の仕方が異なる旨の反論があったため、画像診断の専門医に客観的な立場から鑑定を求められた。

頚髄損傷疑いについて ~2004年に交通事故。MRIにて精査を実施~

下記の右図にて脊髄内が高信号に見えるが、左図:Sagital画像を見ると異常所見は見られない。右図の脊髄内信号上昇はアーチファクトが原因ではないかと考えられる。
撮影断面のスライス厚が5.0mmと厚く、また、傾斜のある部位のためPartial Volume(パーシャルボリューム)効果による影響が考えられる。

Partial Volume(パーシャルボリューム)効果

隣接するものの境界面がスライス面に対して斜めであったり小さな組織の場合に、異なった組織の色素がボクセル内で平均化され境界が不鮮明となる現象。
スライス内において、ボクセル内に高信号のものと低信号のものがあった場合、それらが混ざり合って信号の色合いが変わってしまう。
改善策として、スライス厚を薄くする、高磁場の装置を使い分解能・コントラストを向上させる、等がある。


Partial volume(パーシャルボリューム)効果により、低信号部分と高信号部分が混ざり合い、正確な画像情報が得られない。また、限局的な高信号は、場所がずれたように見えてしまう。

スライス厚を適切に設定することで、より正確な画像情報が得られる。

Partial Volume(パーシャルボリューム)効果を示す画像所見・その1


3.0mmで撮影したことにより、診断に適したシャープな画像が得られる。

赤丸の箇所のものが、10㎜で撮像した際に、パーシャルボリュームの影響で脊髄内に高信号(偽信号)が出現したと考えられる。屈曲部分なので、パーシャルボリュームの影響を強く受け、また画質も落ち診断にはとても使えない。

Partial Volume(パーシャルボリューム)効果を示す画像所見・その2


左図:3.0mmの画像(条件を最適化)では、脊髄内も低信号であり、特に異常所見は見られない。
しかし、右図:5.0mmで撮像した画像では、Partial Volumeの影響を受けて脊髄内が高信号になった。脊髄液との信号差も曖昧なため、診断をつけることが難しくなる。

本事案のポイント

(1)MRIのT2w画像の撮像において、スライス厚を厚くした場合に、脊髄内の信号上昇、および偽信号の出現が見られた。
(2)通常T2w画像では、脊髄内は低信号として描出されるので、診断の妨げになり得る。
(3)頚髄損傷として後遺症が認定されるには、MRIのT2w強調画像で高信号が認められることが絶対である。
(4)よって、撮影条件の最適化を行わなければ、アーチファクトや偽画像の問題により、正確な画像診断を行うことは困難であると言える。
(5)医療画像には様々な原因でアーチファクトが生じることがあり、病変との判別には、高い専門性を有する画像診断医の評価が不可欠である。