事例3/密室内転倒事故における眼窩部外傷に関わるケース・・・眼窩内所見は偶然性を裏付けるか

事案概要

保険金請求された事故は、果たして偶然のものであったのか、それとも故意であったのかを究明する目的にて、救急搬送先での検査画像の鑑定を依頼された。
事故当日、海外旅行中の受傷患者(被保険者)は、宿泊先ホテルにて帰国前の荷物整理をしていた。
室内は荷物が広げられたままの状態であったが、空腹であったため、即席カップ麺を食べようと給湯準備をし、数分後、カップ麺を食べようとして、右手にカップと箸を持って移動しようとしたところ、広げた荷物の下に敷いていたシートで足を滑らせ前方向に転倒した。その際、庇い手的に両肘を床についたことから、手に持っていた箸を自身の右眼窩部に刺してしまった。
帰国後、海外旅行保険の保険金請求を行ったところ、損害保険会社より、事故は密室内で発生し、目撃者がなく、眼窩部の画像陰影が気泡の可能性があると判断されたことから、自身で麻酔をしたうえでの故意が疑われ、問題となった画像所見を検討究明することとなった。

鑑定の要点

転倒事故発生後、被保険者の居室に駆け付けたホテルスタッフが目撃した際には、箸は途中で折れて、まだ被保険者の眼に刺さった状態であった。
救急搬送された大学病院にて、折れた箸が抜き取られ治療が行われたものの、箸の先端部(18㎜程度)の所在は不明であった。
同病院にて撮影された検査画像には、眼窩部に陰影が確認されたことから、果たしてこの画像所見が気泡なのか所在不明となっている箸の先端部に一致するものなのかを判定することとなった。

受傷状態(図解)


箸の先端が見当たらず、体内に入っているか否か?が問題となっている。
これを画像で証明できるかという問題。

鑑定結果


CTとMRI検査の各画像を精査した結果
(1)CT画像上、右眼窩下壁の外直筋と下直筋に接した部分に、外直筋よりもわずかにhigh density lesion(異物を示唆)を認めること。
(2) 異物が、直径3㎜、長さ9㎜大の長径の物質であること。
(3)MRIの信号がsignal void lesion(繊維性組織を示唆)であること
などから、木製病変(折れて所在不明な箸の先端部分)に矛盾しない所見であることが確認された。

本事案のポイント

本件では、患者の治療先病院でも異物があることは認められていたが、箸の先端と一致するかまでは判定されず、保険会社は「故意でもできる」と主張したが、本鑑定により、「故意で眼窩と眼球の接する部位に箸を滑り込ませる事には無理があり、床にぶつかった箸が骨(眼窩骨)を支点にテコの原理で眼球が外側に飛び出し気味になって眼窩骨膜や強膜外隙等に沿って視神経近くの眼球後壁に刺さった」との結論に至り、裁判では、事故によるものと断定され、保険会社の訴えを退けることができた。本事案は、海外旅行保険に関わる保険金請求にまつわる事例であるが、このような事故に関連するケースでも、画像鑑定が問題解決の有効な手段であることが実証された。