メディカルリサーチ株式会社

事例紹介21

高齢者が車椅子移動中の転倒事故後に死亡。
事故と死亡に因果関係はあるのか検討したケース

【事案の概要】

鑑定対象者:O氏 80代 女性

O氏は高齢と持病により歩行困難な状態であり、普段から移動は車椅子にて介助されていた。
介護施設にて介護士の介助のもと、車椅子で移動していたところ、スロープ部分でバランスを崩し車椅子ごと転倒。O氏は車椅子から投げ出され、頭部打撲などの傷害を負った。

すぐに病院へ搬送され、頭部CT検査を受けるが、頭蓋内出血など外傷性の所見は認められなかった。
しかし、CT検査から4時間後より意識障害を認め、呼吸状態が悪化。
再度頭部CT検査を行うと脳幹部に出血が認められた。
O氏は転倒事故から2日後に脳幹出血を直接死因として死亡した。

O氏のご家族から相談を受けた弁護士より、転倒事故と脳幹出血との因果関係について精査希望の依頼となった。

【検討のポイント】

第1.脳幹部損傷の分類

頭部外傷による脳幹部損傷は、原発性と二次性に分類される。
【原発性脳幹部損傷】頭部への外力によって、脳幹部が直接損傷されること。
【二次性脳幹部損傷】ほかの脳損傷により、脳全体が大きくゆがみ、その結果として、脳幹への圧迫やねじれが発生することで損傷されること。

→O氏の場合、頭部CT画像では、脳幹部出血以外の所見は見受けられなかったため、上記の二次性脳幹部損傷は否定的。


第2.原発性脳幹部損傷を裏付ける画像所見

O氏が車椅子から転落し、頭部を強打したとすれば、その際に頭蓋内の脳が大きく偏位したと考えられ、直接損傷となった可能性は高い。頭部へ加わった外力を推測する際、打撲によって生じた頭部皮下血腫の量が参考となるが、O氏の初回の頭部CT画像より、左前額部に約2cmの厚さに達する皮下血腫があった(画像1)ことからも、O氏の左前額部には非常に強い外力が加わったことが伺える。

また、O氏の初回の頭部CT画像と、状態変化後に撮影された頭部CT画像のどちらも二次性の脳幹部損傷をきたすような所見は確認できなかった。

さらに、鑑別としては非外傷性の脳内出血も挙げられるが、CT画像上、外傷性脳内出血では出血部分が、非外傷性脳内血腫のように明瞭ではなく,けばだったようにみえるのが特徴とされている。O氏の場合も、脳幹部の血腫はCT上、辺縁が不明瞭でけばだったようにみえた(画像2)。


第3.既往症と死亡との関連

O氏の担当医は「O氏の持病により出血傾向も考えられた」と述べた。

→O氏の事故より1週間程前の血液検査の結果ではA氏に出血傾向をうかがわせる数値はなかった。O氏が事故前から出血傾向を認めていたとは言えず、O氏の既往症が今回の脳幹部出血に直接的な影響を与えたとは考えにくい。80歳代という年齢による血管の脆弱性が、出血の発生に影響を与えた可能性は考えられる。

【鑑定結果】

O氏の脳幹部出血は、車椅子での転倒事故時に、頭部に非常に強い外力が加わったことにより引き起こされたと言える。
以上の内容にて、脳神経外科専門医による意見書を作成。

【意見書をもとに行われた話し合いの結果】

作成した意見書をもとに施設側と話し合いがなされた結果、O氏の転倒事故と、脳幹部出血の因果関係が認められ、和解が成立した。

以上